バーチャルオフィス型在宅雇用の薦め

昨今、就労や勉強の場で、テレワークが取り入れられることが多くなりました。

しかし実際に導入が進んでいくと、テレワークは良い面ばかりではなく、様々な課題が挙げられるようになりました。また様々な解決方法やツールが提案されて、現場ではやや混乱しているケースも見られます。

どこだれは、二十数年にわたる重度障害者在宅雇用の実践経験から、バーチャルオフィス型テレワークをお薦めします。テレワークの中でも障害者の在宅勤務に焦点を当てて、バーチャルオフィス型在宅雇用についての詳細を、順を追って以下に紹介します。

従来の働き方は通勤するのが当たり前

これまでの一般的な働き方とは、職場に通勤することが当たり前でした。それは主に次のような理由からでした。

ア.仕事に必要な道具や閲覧資料などは職場にある

イ.会社の仕事は、社員がコミュニケーションして情報共有したり知恵を出し合うことが重要。そのためには、仲間が同じ場所に集まって会議や雑談する必要がある

多様な働き方の出現

しかしICTの進歩により、ア.の理由に関しては「ペーパーレス化が進み、資料はパソコンなどで作成しファイルサーバに格納する」「資料はファイルサーバに格納されており、パソコンを使って社外からでもアクセスし閲覧できる」ようになりました。

またイ.の理由に関しては「コミュニケーションシステムにより、職場に集まらなくても会議や雑談ができる」ようになりました。

このように、従来は職場に通勤することが当たり前でしたが、自宅など職場以外でもテレワークによる就労が可能になりました。

障害や家族の介護などの個人的事情で通勤が困難な方々に恩恵があるのはもちろんですが、感染症や災害あるいは異常気象などの社会的事情で移動が困難な場合にもメリットが大きいです。

ここからは、障害者の在宅雇用に特化して進めます。

障害者在宅雇用の労務管理いろいろ

 一口に在宅雇用といっても、次のA、Bのように大きく2つの労務管理方法があります。

A.個別作業型在宅雇用

  • 業務は、在宅勤務用に切り出した作業を一人ひとりに割り当てる。複数の在宅勤務者同士がコミュニケーションしながら一つのプロダクトを仕上げることはしない。
  • 在宅勤務の管理者(以下コーディネータと呼ぶ)が、一人ひとりの在宅勤務者を直接管理する。
  • 仲間とのコミュニケーションが少なく、職場と在宅勤務環境での情報格差が大きい。
  • コミュニケーションが苦手と言われる精神障害者にとっては、障害特性に配慮された労務管理方法で適している。
  • コミュニケーションの方向や1日の流れを表すと、それぞれ図1、図2のようなイメージになる。

B.バーチャルオフィス型在宅雇用

  • 業務は、特別に在宅勤務用に切り出す工程はない。通常のオフィス同様、複数の在宅勤務者同士がコミュニケーションしながら一つのプロダクトを仕上げる。
  • コーディネータは存在するが、コーディネータをサポートするリーダー的な在宅勤務者も育ちやすく、若手在宅勤務者の育成に携わる。
  • 仲間とのコミュニケーションが豊富で、職場と在宅勤務環境での情報格差は小さい。
  • 他者とのコミュニケーションには特に問題がない肢体障害者や内部障害者に適している。
  • コミュニケーションの方向や1日の流れを表すと、それぞれ図1、図2のようなイメージになる。

  図1 個別作業型(左)とバーチャルオフィス型(右)のコミュニケーション方向イメージ

 

図2 個別作業型(左)とバーチャルオフィス型(右)の1日の流れイメージ

バーチャルオフィス型在宅雇用の重要性

図1図2により、個別作業型の環境ではコミュニケーションが少ないので、仲間が身近に感じられず臨機応変の相談もできないため孤独感があります。また仲間との勉強会やスキルアップの機会が少なく、業務内容もほとんど固定されるため成長がなかなか実感しにくいです。このように自宅と職場とで情報格差があると、在宅勤務者は通勤社員と能力が同じでも平等な勝負ができません。

会社の仕事として高いパフォーマンスを出せるようにするためには、コミュニケーションしやすく情報格差が無い環境が必要です。他のメンバーと仲間意識を持つことができて、「孤独感がない、楽しい、働きがいがある」ことが大切です。

よって在宅勤務でも限りなく職場に近い、心理的安全性の高い環境を構築する必要があります。

在宅雇用の労務管理の問題点

在宅雇用の労務管理方法において「個別作業型」は主に精神障害者に適しており、「バーチャルオフィス型」は主に肢体障害者に適しているとしました。

ここで課題と思われるのは、他者とのコミュニケーションに問題のない(むしろコミュニケーションが好きな)肢体障害者や内部障害者において、個別作業型の労務管理を適用している例が多く見受けられることです。

「会社の仕事は、社員がコミュニケーションして情報共有したり知恵を出し合うことが重要」であるのに、個別作業型ではいつまでたっても、通勤の困難な重度障害者は、本当の意味での『会社員』になれません。

障害特性上の問題がなければ、バーチャルオフィス型の労務管理を適用すべきと考えます。

「バーチャルオフィス型在宅雇用」実現のキーポイント

パソコンとファイルサーバにより、テレワークのための最低限の道具は確保されますが、場所の離れた多くのメンバーが、実際の職場と同じようにコミュニケーションできるようにするのは容易ではありません。

バーチャルオフィス型在宅雇用の労務管理を実現するためにインフラ面、マネジメント面で次のような方法を取り入れることを推奨します。

これらは、二十数年にわたる重度肢体障害者在宅雇用を継続してきたノウハウでもあります。

■インフラ面
  • 通勤社員と同じ職場のコミュニケーション環境が構築できるバーチャルオフィスシステムを導入する。“業務中の在宅勤務者の名前と状態が表示される”、“すぐにいつでも誰とでも話ができる”ことが可能なシステムとして、『ワークウェルコミュニケータ クラウド』(株式会社沖ワークウェル製)がある。
■マネジメント面
  • バーチャルオフィスシステムを導入したとしても、在宅勤務者と本社のコーディネータ、あるいは在宅勤務者同士があたかも同じオフィスにいるかのように、自在にコミュニケーションする雰囲気作りをすることが必要である。そのような土壌づくりをリードするコーディネータをアサインする。

どこだれは、企業様へのバーチャルオフィス型在宅雇用の提案とともに、就労移行支援事業者様にはバーチャルオフィス型在宅訓練を提案いたします。